「脳梗塞」と聞くと、脳の血管や高血圧、動脈硬化が原因だと思われる方が多いかもしれません。しかし、実はその原因が心臓に隠れていることがあります。特に、比較的若い方で起きた脳梗塞や、原因不明とされた脳梗塞の中には、心臓の構造上の問題が関わっているケースがあります。
当院では、そのような心臓に原因がある脳梗塞に対して、お薬だけでなく、カテーテルを用いた新しい予防治療を積極的に行っています。
卵円孔とは、心臓の右心房と左心房の間の壁(心房中隔)の中央に組織が重なり合うようにできた穴で、胎児のとき、胎盤を通して流れてくる酵素を含んだ血液を胎児の全身に循環させるためにあります。この穴は、通常は生まれた後に自然に閉じます。
しかし、成人の約4〜5人に1人は、この穴が完全には閉じずに、小さなトンネルのような隙間として残っていることが分かっています。これを「卵円孔開存(PFO Patent Foramen Ovaleの略)」と呼びます。
PFOは病気ではなく、多くの方は持っていても生涯何も問題は起こりません。
通常、足の静脈などにできた小さな血の塊(血栓)は、心臓を通って肺に流れ着き、肺で処理されるため問題にはなりません。しかし、PFOがあると、この血栓がPFOのトンネルをすり抜けて、心臓の左側(左心房)に入り込んでしまうことがあります。そして、左心房から送り出された血栓が脳の血管に飛んでいってしまうと、脳梗塞を引き起こします。これを「奇異性脳塞栓症(きいせいのうそくせんしょう)」と呼びます。
PFOが原因と考えられる脳梗塞と適切に診断された方が対象となります。当院では脳卒中専門医と循環器内科専門医を中心にブレインハートチームを結成し、治療選択や効果、安全性などを十分議論して治療方針を決定しています。
治療は、足の付け根の血管からカテーテルを入れ、心臓の中のPFOまで進めます。そして、2枚のディスクが中央で繋がったような形の閉鎖栓デバイスを使って、PFOを両側から挟み込むようにして穴を完全に塞ぎます。
胸を切る必要がなく、体への負担が少ない治療です。この治療によって、将来の脳梗塞のリスクを大幅に減らすことが期待できます。
治療時間は1時間程度です。留置後の閉鎖栓デバイスは自然治癒過程において、次第に内皮に覆われていきます。
当院では、患者さん一人ひとりの病状や背景を丁寧に評価し、最適な脳梗塞の予防法を提案します。原因不明の脳梗塞、特に若い方で脳梗塞と診断された方は、ぜひ一度、循環器内科または脳神経内科までご相談ください。
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